低欲望社会 2017 6 4
書名 「老後不安不況」を吹き飛ばせ
「失われた25年」の正体と具体的処方箋
著者 大前 研一 PHPビジネス新書
著者によると、日本は「低欲望社会」に突入したから、
欧米で作られた経済学は通用しないという。
だから、日本で、ケインズ経済学を実践しても、
金融緩和しても、効果はなかったという。
確かに、アメリカでは、
借金をしてまでも消費をするという独特の文化があります。
そういう国では、ケインズ経済学も金融緩和も、大いに有効です。
しかし、日本のように、欲望が少ない状態、
つまり、低欲望社会では、そういう経済学は通用しないでしょう。
著者によれば、日本では、
「老後が不安」という新型の不況が流行っていると言います。
私の記憶が確かならば、今から10年以上前、
100歳を超えた双子の姉妹がテレビに出演して、
司会者が「出演料は、どう使いますか」と聞くと、
「半分は、老後のために貯金する」と答えたという。
私は、100歳を超えた人が考える「老後」とは何だろうと思いました。
一方、若者たちも、将来の不安、
つまり漠然とした老後の不安に対して、
貯金に励む姿があるという。
日本は、先取り型の不安が強いかもしれません。
ある国の国民は、そういう国が多いですが、
「そんな先まで考えても仕方ない。
その時になったら、その時に考えよう。
今を楽しまなければ損だ」と考えて、人生を楽しむ国があります。
誤解を招かないために、そういう国とは、アメリカではありません。
アメリカは、ステータスシンボルを高めるために、
借金をしてまでも消費をするという国柄です。
「今を楽しむ国」と「ステイタスシンボルの国」においては、
ケインズ経済学も金融緩和も、大いに有効ですが、
日本のように、物欲の少ない社会においては、
そういう経済学は、有効ではありません。
新しい経済学、つまり日本社会に適合した経済学を作る必要があります。
著者によれば、日本の経済学は、「翻訳経済学」だと言います。
つまり、欧米の経済学を翻訳しただけだと言うのです。
小欲知足 2017 5 28
「小欲知足」(しょうよくちそく)とは、
仏教の言葉で、足ることを知って欲望を抑えることです。
人間は、自然と「あれも欲しい。これも欲しい」という欲望が出てきますが、
そういう欲望を抑えて、今でも、現状でも満ち足りていることを知ることです。
こうした仏教的な修行には、
仏教の要諦である「中道」も含んでいます。
つまり、欲望を全部消してしまうのではなく、
欲張ることなく、欲望をコントロールして、少ない欲で満足することです。
ところが、今の若者は、
仏教的な修行をすることなく、
すでに「悟っている」という。
若者、特に若い男性に聞くと、
「特に欲しいものはない。
だから、そんなに、お金も必要ない。
行きたいところもない。
女性にもてたいとは思わない」というのです。
つまり、欲望を抑えるどころか、
欲望がない状態です。
これでは、生まれながらにして、
すでに悟りの境地に達しているかもしれません。
「若者よ、欲を持て」と言うと、
仏教に反する感じがします。
日本の若者は、いったい、どうなってしまったのか。
競争のない教育環境で育つと、
仏教的な悟りを得てしまうのか。
経済評論家の大前研一氏によると、
日本経済が低迷しているのは、
「日本が低欲望社会だからである」という。
つまり、欲望が少ない社会だからこそ、
経済が不活発になっているという。
資本主義の中心地であるウォール街では、
「あなたのものは私のもの。私のものは私のもの」という強欲資本主義が普通なのに、
日本では、仏教的な修行をしなくても、
すでに悟りの境地に達している若者が続出しています。
世界に必要なのは、中道の精神です。
欲望を捨て去ることでもなく、
強欲に生きることでもありません。